December 2020
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 私の母が戦中、戦後 楽しみのない日常を強いられる疎開先で土間に裏の雑木林で採って来たリンドウの花を活けて「キレイだねぇ」と云っていた事を何度も思い出します

 
 

 母の孫娘が今年になって私に「おバアちゃんは「リンドウが好き」と云っていたから リンドウを買って来て飾っているの」と云いました その時 母のリンドウは今花屋さんにあるものとはまったく違うのに…と密かに思っていました

 と その直後 偶然 野生のリンドウをひと束頂いたのです 軽井沢で造園業を営む知人が 管理を引き受けている広い庭で野生のリンドウを見つけ何年かかけて殖やしたものだそうです

 
 

 私は大喜びで ダンボール箱からそのリンドウを取り出し「アッ!これだ」…
 空になったダンボール箱には いっぱいのダニと小さなグリーンのクモ その他にも小さな虫が残されていました それを見た瞬間 私の内側になにか解らない暖かな感覚が湧き上がりました

 このリンドウはこんなに沢山の命を守って来たんだと気付いたのです

 
 

 すぐに活けて描きはじめましたが この花は日が射すと開いて淡いブルー 日が陰るとすぐに閉じてうす紫色になります

 ぼんやりとした儘 日々は過ぎて行くけれど自然は こんなに様々な命に溢れているのだと 私もこの自然の中に生かされていると感じながら「リンドウの絵」を描きあげました

 

 2021年が平穏でありますように と念じます

 

不二子